Jazz

ジャズとイスラームの面白い関係(1/3)

イスラーム

「ドイツは毒ガスを用いても、世界を征服できなかったが、アメリカはジャズだけで世界を征服した。」ジャズを誇る政治的メッセージで有名な言葉がある。現代の音楽だけでなく、社会全体にも大きく影響をもたらしてきたジャズ音楽は、今から遡ること100年以上も前に、アメリカ合衆国のニューオリンズにて、南米の奴隷制プランテーションによって渡ってきたアメリカ黒人、いわゆるアフリカン・アメリカンやアフリカ系アメリカ人と呼ばれる人々が生み出した。当時、南北戦争に負けた南軍の払い下げ軍楽器でアフリカ系アメリカ人たちが演奏した音楽がジャズの発祥となったとされている。つまり、ジャズを生んだ人々のふるさとはアフリカにあり、同様にアフリカ人がアメリカの地に足を踏むことがなければジャズ音楽は誕生することはなかった。しかし、西洋音楽とアフリカ音楽の融合によって誕生したと言われているジャズ音楽だが、未だ明確な研究が進んでいないのが自明である。例えば、アフリカの言語学者によると、アフリカで母語とされている言語は見方によっては3000種類あり、それに伴う民族や文化が存在することから、南米の奴隷制プランテーションにおいて、奴隷たちが持ち寄った文化が、一体どのようなものかは詳しく解明されていない。言い換えると、プランテーション当時、アフリカに広く頒布していたイスラーム教の教えが、どのようにして民族に浸透していったのか、それがどれくらいアメリカに渡り、どのような結果が生じたか、などといったことが、音楽的視点で解明されていないのが現状である。

ジャズとイスラームの面白い関係その1

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ムスリム(イスラーム教徒)であったジャズの巨匠

 しかし、ジャズを牽引してきたミュージシャンの多くがイスラーム教徒であることは、あまり知られていない衝撃の事実だろう。即興演奏を主とする形態である「ビ・バップ」を創始したチャーリー・パーカーをはじめ、巨匠と呼ばれるサックス奏者のジョン・コルトレーン、トランペッターのディジー・ガレスピー、ドラマーのアート・ブレイキーまでもがムスリムあるいはイスラーム教に改宗をしていると言われている。また、特筆すべき点として、120人以上のプロのジャズミュージシャンがイスラーム教徒である記録が残っている。(引用:https://jazzdiscography.com/fitzgera/muslim.htm)多くの人々を魅了させ続けた彼らが、一体どのような経緯でイスラーム教徒になったのかを考えることは、ジャズ史に限らず、音楽史を知る上で大変重要な位置付けであるだろう。
イスラームとビバップ・ジャズ 著:ダニエル・パイプの記事によると、ミュージシャンがイスラームに向かった理由として、部分的に宗教の本質的なところがあげられていたり、音楽的な部分と宗教的な部分の考え方などが書かれている。( http://ja.danielpipes.org/blog/13902 )「以下引用:ミュージシャン達は、部分的には本物の宗教的な理由でイスラームに向かった。部分的には(1953年の『エボニー』記事の言葉では)「イスラームは民族の壁を崩落させ、目的と尊厳を信徒達に授ける」からである。」

ジャズとイスラームの面白い関係その2

「François-Edmond Fortier (1862-1928) - Carte postale (own collection)」の画像検索結果

バンジョーの祖先はセネガルのジョラ民族

 ジャズ音楽の歴史を辿ると、ジャズは、西洋楽器と黒人文化の融合によって、ニューオリンズで生まれた。そして、これらのジャズは「ニューオリンズ・ジャズ」と呼ばれ、ダンスの伴奏として人気を博し、1950年代末まで流行した。そんなニューオリンズ・ジャズは、クラリネットやトランペット、バンジョーといった楽器のサウンドが特徴的で、ブルース的なニュアンスが強かったりと、独特な雰囲気を持つのが特徴だ。そして、何よりもここで注目したいのが、このバンジョーという楽器である。バンジョーは、アフリカで馴染んでいた楽器を模し、南米のアパラチア地方において、奴隷を強要されていたアフリカ系アメリカ人が生み出したものであると言われている。バンジョーの祖先は、セネガル・ガンビア地方の中でもカザマンス地方という地域を中心に存在していたジョラ民族という民族によって演奏されていた楽器でエコンティングと呼ばれる楽器とされている。(引用:TML, A Traditional Music Library. Retrieved 02-08-2007. / Conway, Cecelia(2005). African Banjo Echoes in Appalachia. The University of Tennessee Press. pp. 424

そして現在、セネガル共和国、ガンビア共和国のデータを調べると、国民の9割以上がイスラーム教徒であり、これらの地域は11世紀からイスラーム化が始まったとされている(引用:「イスラームの国セネガル」『セネガルとカーボベルデを知るための60章』小川了編著、明石書店〈エリア・スタディーズ78〉、東京、2010331日、初版第一刷、30-33頁)。

ここから言えることは、バンジョーのルーツがアフリカにあり、奴隷制プランテーションというルートを辿って、ニューオリンズ・ジャズの音楽の創作に貢献したということである。すなわり、少なからずこうしたことから、ジャズとイスラームの親和性を確実に見て取ることができる。そして、このニューオリンズ・ジャズは、瞬く間に全米に広がり、次のベニー・グッドマンに代表されるスィング・ジャズを生む基盤を作ったのであった。

(著:濱田真秀)