Jazz

ブラウニー病

クリフォードブラウンブラウニー

(画像:PDX Jazz引用)

 

ブラウニーの愛称で親しまれたクリフォードブラウン。

実は、21世紀という時代でも、ブラウニー病が蔓延しているのはご存知だろうか。

私はブラウニー病に感染した一人であるが、ブラウニー病の症状は大変恐ろしいものである。

 

スポンサーリンク

●症状

①中毒症状

ブラウニー病の核心といってもいいのが、タンギングの気持ち良さだ。

そのタンギングの気持ちよさといったら、八分音符の連続による快感にあり、到底他のトランペッターには期待できない。クリフォード・ブラウンほど完成されたタンギングを持つ人はいないだろうし、逆に言えばブラウニーにのみ到達することができた世界であろう。

だからこそ、ブラウニーのタンギングが中毒症状を引き起こしてしまう。

火山が噴火するような「チェロキー」、ウィズ・ストリングスのような、なめらかで美しいバラードも素晴らしいが、「クリフォード・ブラウン・アンド・マックス・ローチ」や「スタディ・イン・ブラウン」で聴かれるようなミディアムテンポより少し早めのテンポの曲において、ブラウニーのタンギングが一番引き立つだろう。

特に、「ダフード」では、タンギングの技術の素晴らしさはもちろん、タイム感も完璧である。というのも、通常のテイクとオルタネイトテイクの秒数の差が僅か1秒しかなく、いくらプロミュージシャンであったとしても、同じ人間とは思えない技術だ。

そして、トランペットの特徴を最大限に生かしているのもまた、クリフォードブラウンである。

遠くまで飛ばせる大きく太い音、そして、鋭くてキレのある、金色に輝く音色を完璧にコントロールすることができるブラウニーは、その音で、後にレジェンドと呼ばれるようなミュージシャンを含め、多くの人々を虜にしてきた。

その上ブラウニーは、これだけ素晴らしい音色を持っているのにも関わらず、高いハイノートも兼ね備えているから、余計に恐ろしい。

②幻聴

本当に即興演奏なのか耳を疑ってしまうほど、ブラウニーのソロは驚くほど完成度が高い。

その為、一度聴いたフレージは脳裏から離れることがなく、無音環境でさえ、ブラウニーのフレーズが鳴り止まないことさえある。これも中毒症状と同じく、非常に恐ろしい症状である。

ブラウニーのコード進行の処理速度はもちろん、どの曲でも、ユーモアとウィットに富んだ内容で人々を魅了する。そして、そのアドリブは、決して曲の持っているイメージを崩すことなく、山あり谷ありでアート性も優れているのだ。

また、ブルーノートの1500番代でもある、クリフォードブラウンメモリアルというアルバムのボーナストラックに収録されている、「Bellarosa」という曲などのアドリブで顕著に見られるキュッと跳ね上がる装飾音もまた気持ちがいい。

そして、彼のメロウなアドリブは、温厚な人柄をも象徴する。

ブラウニーはどんな時でも笑顔を絶やさず、明るい人物で、酒や薬物に溺れることはなかったという。ロリンズ曰く、ブラウニーの人間性や生活態度は他のミュージシャンも学ぶことが多く、演奏面以外でも、みんなから愛されていた。

音楽に熱心で真面目なブラウニーは、周囲からは「スイート・ブラウニー」と呼ばれたほどだった。

 

●治療法

これらの症状に当てはまった場合、「聴く」ことが重要だ。

ブラウニーの音楽をひたすら聴こう。

 

そして、先ほどまでのブラウニーの話を続けたい。

ブラウニーはペンシルベニアのターンパイクで、交通事故で亡くなる。25歳であった。バド・パウエルの弟であるリッチー・パウエルと、その妻のナンシーが運転する車にブラウニーが乗っており、この事故で3人とも亡くなってしまう。

 

もし、ブラウニーが長生きしていたら、ジャズの世界はどのようになっていったのか、大変興味深いものである。

 

(文:濱田真秀)