若手サックス奏者が選ぶ!もっと聴きたい人のための「私の偏愛アルトサックスプレイヤー」

情熱的なエネルギー、叙情的な音色。
時に甘く、時に激しく。
アルト・サックスという楽器は実に表情豊かで、演者による個性が最も反映される楽器のひとつでもあります。

みなさん、こんにちは!
Jazz2.0編集部の及川です。

及川
前回の記事では、サックス奏者がおすすめするジャズサックス入門5選と称して5人のサックス奏者をご紹介しました。

今回は、アルト・サックス奏者である私が愛してやまないアルト奏者をレジェンド・プレイヤーから若手奏者まで4人ご紹介します!

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Sonny Stitt

まずご紹介させていただくのは、Sonny Stitt(1924-82)です。

Sonny Stitt.jpg
Tom Marcello Webster, New York, USA - Sonny Stitt plays Alto, CC 表示-継承 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3856208による

正統派でのびのびとした歌い口

Sonny Stitt(ソニー・スティット)はパーカー直系の正統派と言われるアルト・サックス奏者です。朗々と歌い上げるスティットのアドリブは気持ちよく、歓喜に満ちた音色は『祝福のアルト・サックス』という印象を与えてくれます。

スティットは1924年、アメリカ合衆国のボストンに生まれ、ミシガンで育ちました。
スティットの育った家庭環境は、父親は大学の音楽教授、母親はピアノ教師という音楽的に恵まれたものでした。

ジャズの王様と称されるチャーリー・パーカーとは1943年に初めて出逢います。
パーカーとスティットは、お互いの演奏スタイルや目指す音楽性が似通っていることを認め合っていたといいます。
このような類似が見られたのも、スティットが摸倣したからだけではなく、部分的には偶然のためでもありました。

スティットはジャズサックス奏者の中では非常に珍しい、「アルト・サックスとテナー・サックスの二刀流」として有名です。
テナーサックスを演奏する時は、「スティットはパーカーの真似をしている」との非難を免れたからだとも言われています。
しかし、実際には所属していたビッグバンドにおいて、デクスター・ゴードンやジーン・アモンズと並んで、テナー・サックスをより頻繁に演奏するようになっていました。
そのため、ソロ活動に移ってからも自分の表現したい音楽に応じてアルト・サックスとテナー・サックスを持ち替えていたようです。

スティットはしばしば「パーカーのそっくりさん」と言われますが、パーカーがビバップという新しいスタイルのジャズを創造したのに対して、スティットはパーカーの正統的な後継者として、ビバップを追及した人と言えます。 

Biography | Sonny Stitt
http://www.sonnystitt.com/biography/

晩年、スティットは首の悪性黒色腫を患っていました。

日本で行われる大物ジャズメンのコンサートといえば大都市でしか開催されないのが通例でしたが、地方の小さな町の人々にも本物のジャズを広める目的で、1982年7月12日からは北海道をスタート地点としたソニー・スティット・カルテットの日本全国縦断ツアーが予定されていました。

この最後のツアーはスティット自身の強い意志により実施されましたが、旭川で一曲のみ演奏したのを最後に演奏ができなくなってしまいました。

その後急遽帰国し、3日後にスティットは帰らぬ人となってしまいました。

演奏ができずスティットが帰国してしまったツアーの後半は、ステージ中央に置かれた椅子に彼の愛器を飾った状態で、ジェームス・ウィリアムス(ピアノ)、ナット・リーヴス(ベース)、ヴィニー・ジョンソン(ドラムス)のトリオのみでコンサートが行なわれました。

おすすめの音源

Sits in with the Oscar Peterson Trio (1959)

このアルバムは、ピアニストのオスカー・ピーターソンのトリオとスティットの共演盤で、スティットはアルト・サックスとテナー・サックスの両方を演奏しています。
豪快にスイングするオスカー・ピーターソントリオと嬉々として歌い上げるスティットの相性は抜群で、とにかく気持ちがいいです。

及川
私の本当に大好きなアルバムのひとつです!
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Tune-Up! (1972)

スティットは、なんと生涯で100枚を超えるアルバムを録音しています。
その中でも、この録音はトップに位置すると言っても過言ではありません。
なんといってもピアニストのバリー・ハリスのバッキングの上で吹きまくるスティットが最高です。
これぞジャズの王道!と思わず唸りたくなります。
収録曲もスタンダードばかりなので初心者の方でも聴きやすいと思います。

Kenny Garrett

続いてご紹介するのはKenny Garrett(1960-)です。

Kenny Garrett (2013).jpg
Jens Vajen - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=58057054による

熱烈なエネルギーとエッジなスタイル

Kenny Garrett (ケニー・ギャレット)はほとばしるエネルギーとエッジの効いたスタイルが非常に特徴的な、現代を代表するアルト・サックス奏者です。

ギャレットは1960年10月9日、ミシガン州デトロイトで生まれました。
父親は趣味でテナーサックスを演奏する大工であったといいます。

サックス奏者としてのギャレットのキャリアは、1978年にデューク・エリントン・オーケストラに加わったときにはじまりました。
ギャレットは24歳の時にトランペッターのウディ・ショウのサポートでデビュー作『Introducing Kenny Garrett』(84年)をリリース。

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その2年後の86年にマイルス・デイヴィスのバンドに参加します。
その後、マイルスが死去するまでの約5年間そのバンドに在籍しました。

また、同じく86年にはジャズ界の重鎮であるアートブレイキー・アンド・ザ・ジャズ・メッセンジャーズでの録音を残しています。

このように、若きギャレットはジャズ界の中でもとりわけ特別なバンドでキャリアを築きました。

ギャレットのサウンドは、伝統的で確かな技術とモダンで研ぎ澄まされた感覚とブラック・フィーリング溢れるリズム感が特徴的です。

「ワシントン・シティ・ペーパー」紙では「彼の世代で最も重要なアルトサックス奏者」と、「ニューヨーク・タイムズ」紙では「チャーリー・パーカーに次ぐ、ジャズで最も称賛されているアルトサックス奏者の1人」と評されました。

おすすめの音源

Triology(1995)

1995年にリリースされたTriologyは、サックストリオ(サックス・ベース・ドラムス)の編成のアルバムです。

ドラムスに現代至高と言われるブライアン・ブレイド、ベースにはチャーネット・モフェットとニューヨークで活躍する日本人ベーシストの北川潔という錚々たるメンバーを迎えています。

Triology by Kenny Garrett

Songbook (1997)

このアルバムではピアノにケニー・カークランド、ベースにナット・リーヴス 、ドラムスにはジェフ・ワッツという豪華なメンバーを迎えています。

全曲ギャレットのオリジナルで、彼の世界観を存分に楽しむことができます。

エッジの効いた熱い演奏からバラードまで多彩な曲たちと、バンドの疾走感と一体感が秀逸です。

Antonio Hart

続いてご紹介するのはAntonio Hartです。

ANTONIO HART picture
from allmusic

Antonio Hart(アントニオ・ハート)はニューヨークを拠点に活躍する、情熱的なブロウが印象的なアルト・サックス奏者です。

アントニオは1968年メリーランド州ボルチモアに生まれました。
ボルチモア芸術学院、バークリー音楽大学等を経て、ニューヨーク市立大学クイーンズ校にて音楽修士を取得しています。

’80年代後半から本格的な活動を開始し、トランペッターのロイ・ハーグローヴのバンドで注目を集めました。
その後はディジー・ガレスピー、マッコイ・タイナー、フィル・ウッズら数々のジャズ・レジェンドと共演しています。

現在アントニオは教育にも力を入れており、クイーンズ校の修士課程で教授を務めています。
ちなみに趣味は武道を練習することだそうです。

おすすめの音源

Blessing (2015)

Blessingはアントニオの最も新しく発表したリーダーアルバム作品です。
ギターにイスラエル人ギタリストのヨタム・シルバースタインを迎えたオルガンカルテットです。
スティットも一時期オルガニストと共演している時期もあったように、オルガンとアルト・サックスの相性は抜群なんです。
アントニオは一曲目のブルースから超気持ちよく吹きまくっています。
これぞまさに、ハッピージャズ!

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Public Eye(1991)

トランペッターのロイ・ハーグローブの初期のアルバムから一枚ご紹介します。
ドラムスのビリー・ヒギンズ以外は当時みんな20歳前後という恐ろしいアルバムです。
ベースのクリスチャン・マクブライドに至っては当時19歳です。どうなっているんだ。
とにかく疾走感に溢れていて爽快なアルバムです。

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Braxton Cook

続いてご紹介するのはBraxton Cookです。

Braxton Cook(ブラクストン・クック)はアメリカ合衆国で活動する、若手サックス奏者/ヴォーカリスト/マルチインストゥルメンタリストです。

ブラクストンは1991年、アメリカ合衆国のボストンに生まれ、メリーランド州で育ちました。

名門音楽大学であるジュリアード音楽院に在学中のころから、トランペット奏者のクリスチャン・スコットの元でワールドツアーを回りそのキャリアをスタートさせます。
同じく在学中の2013年には、最も著名なジャズコンペティションである「セロニアスモンク国際ジャズサックスコンクール」の準決勝進出者にも選ばれました。

ブラクストンはアルト・サックス奏者としての才能を発揮するだけでなく、ボーカリスト、ソングライター、マルチインストゥルメンタリスト、作曲家としても活躍しています。

ジャズ、ソウル、オルタナティブやR&Bを独自のサウンドにブレンドさせたブラクストンのスタイルは、ジャズの枠を越えて評価されています。

ブラクストンはアメリカ各地のみならず、世界各地で精力的に活躍を続けており、2017年には単独公演のために来日しました。

ボーカリストとしての初のアルバム「Somewhere in Between」をリリースすると、アルバムの複数の曲が「State of Jazz」や「Alternative R&B」というプレイリストに選出されました。その後、現在もっとも影響力のあるプレイリストの1つである「The Butter」の表紙を飾りました。

ブラクストンは現在ロサンゼルスを拠点に活動しています。

おすすめの音源

Somewhere in Between(2017)

ブラクストンのデビュー作となる「Somewhere in Between」はジャズの即興性とR&Bらしいヴォーカルの魅力が存分に詰まった作品です。
柔らかく、エモーショナルなサウンドは聴いていて心地よく、ブラクストンのセンスに感服します。

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No Doubt(2019)

こちらはブラクストンのリーダー2作目です。
2017年のデビュー作「Somewhere in Between」で聴かせたジャズとR&Bを調和させる感覚は残しながら、より洗練されたサウンドを聴かせてくれます。
彼はまさにミレニアル世代のスターと言えるでしょう。

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まとめ

いかがだったでしょうか。

今回は、サックス奏者である私が好きなアルト・サックス奏者を4名紹介させていただきました!

それではまたお会いしましょう。

Jazz2.0編集部の及川でした。

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