「ジャズ・ミュージシャンってどうやって生活してるの?」
ジャズ・ミュージシャンという、一見変わった職業に興味を持っている方も多いのではないでしょうか。
こんにちは。
Jazz2.0編集部の濱田です。
そういうわけで今回は、ジャズのミュージシャンを中心としたギャラの仕組みを解説してみたいと思います。
ジャズ以外の他の音楽ジャンルでも、ギャラの仕組みはほとんど変わらないので、ぜひ参考になればと思います。
それでは参りましょう!
収入源
ミュージシャンの収入はギャラと呼ばれています。
ギャラは、ギャランティの略で、金銭的な報酬を意味することがほとんどです。
そして、ミュージシャンのギャラと呼ばれる収入源は主に7種類にわけることができます。
1つ目に、ライブハウスや飲食店等での演奏にて支払われる場合。
2つ目に、イベンターや企画制作会社等の主催者からもらう場合。
3つ目に、音楽をレコーディング、制作等の制作会社からの場合。
4つ目に、作曲、編曲、演奏した音楽を販売する場合。
5つ目に、講師や先生などレッスンでの場合。
6つ目に、YouTubeや配信などの活動。
7つ目に、その他活動および副業などです。
それぞれ仕組みがバラバラですので、ひとつずつ解説してみます。
ライブハウスや飲食店等での演奏にて支払われる場合
世の中には、ジャズクラブ、ジャズバーなどと呼ばれる飲食店、その他ライブハウスがあり、ミュージシャンはお店からギャラをもらっています。
仕組みとしては、チャージバックと呼ばれるものが多いです。
一言でいうと成果報酬型で、集客した分ギャランティが増える仕組みです。
通常、こうしたジャズを聞けるお店では、ミュージックチャージと呼ばれる料金がかかります。
この料金の6-7割はミュージシャンに支払われて、残りはお店の売り上げとなります。
また、ミュージシャンは、法人ではなく、個人、フリーランスで活動している人が殆どなので、そこから源泉徴収税というものが引かれた金額が、ミュージシャンのギャラとなります。
そのお店でジャズを聞こうと思うと、お客さんは2000円払って、その上に飲食の料金などがかかります。
ミュージシャンはというと、2000円のミュージックチャージの6割をもらうお店だと、お客さん1人あたり1200円のギャラとなります。
20人いたら24000円です。ここから源泉徴収税を差し引いた金額でメンバーと山分けします。
24000円だったら、源泉徴収税は10.21%の2450円がひかれるので、21550円がメンバーの合計のギャラとなります。
仮に3人で演奏していたとすると1人7183円となります。
これは例え話なので、多少の誤差はありますが、計算方法はこのような形が大半です。
ウェディングやホテルなどでの演奏は、固定でギャランティを支払う場合が多く、もちろんチャージバックだけでのギャランティだけではありません。
バンカラなどでの演奏はバイト契約として時給でミュージシャンに支払われます。
イベンターや企画制作会社等の主催者から支払われる場合
イベントの場合、ギャラが固定の金額の場合が多いです。
例えば、一本の出演料でいくら、源泉徴収税がいくら、という計算になります。
正確なギャラは、アーティストのキャリアによって非常にバラつきがあるため、一概にいくらとは言えません。
若手やアマチュアバンドであれば数千円〜数万円、ベテランや大物ミュージシャンであれば数百万という人もいます。
また、海外アーティストを招いたりする場合にはさらに高額となります。
また、チャリティーライブなど、企画によっては有志での出演により、ギャラが発生しない場合もあります。
Degy Entertainmentさんというブッキング・エージェントが有名アーティストの1公演あたりギャラを公開した内容によると
Bob Dylan:$150,000~300,000
Bon Jovi:$1,000,000~
Green Day:$500,000
Justin Biever:$1,000,000~
Lady GaGa:$750,000~
Maddona:$1,000,000~
Maroon5:$400,000~
One Direction:$150,000~200,000
Taylor Swift:$1,000,000~
Jefferson Starship:$15,000~25,000
となっており
世界の超一流トップアーティストのレベルになると億という金額が発生します。
また、ライブハウスなどでよくイベンターと呼ばれる主催者がいて、企画を行っていたりしますが、こうした方はチケットノルマ制と呼ばれる仕組みによってお金のやりとりをしていることがよくあります。
チケットノルマ制とは、ある一定のチケットを売っていただくというノルマが課せられ、一定のチケット枚数を超えるとチケット代の100%がミュージシャンに還元されますが、超えない場合は、ミュージシャンが負担するというものです。
例えば、ノルマが2000円のチケット×10枚とします。
チケットを11枚以上売ればギャラは2000円〜となりますが、
10枚以下の場合、ミュージシャンが負担するという計算になります。
ジャズ箱では、こうしたノルマ制はほとんど見かけることがありませんが、ロックやポップスをやるような箱では、こうしたノルマ制がほとんどではないかと思います。
レコーディング、制作等の制作会社から支払われる場合
レコーディングの仕事は、テレビCMなどの大企業からの仕事なのか、動画内で使用されるBGMなどの中小企業からの仕事なのか、メジャーアーティストのバックバンドのレコーディングなのか、スタートアップのようなバンドからの仕事なのかによって、レコーディングにかける予算が大幅に変わります。
したがって、レコーディングのギャラも、高単価のものもあれば、最低限の単価のものもあります。
しかし、どれだけ単価が安くても、法人からの案件であれば1万円を切ることはほとんどありません。
そこで例え話として、企業のレコーディング予算が20万円で仮にギャラが1万円だった場合の内訳をざっくり書くとこんな感じになります。
ミュージシャン人件費
1万円 ×4時間 ×3名=12万円
レコーディング費用
エンジニア人件費2万円+スタジオ代3万円=5万円
ミックス費用(音の仕上げの作業):3万円
ミュージシャンにかかる費用だけでなく、エンジニアやスタジオ代などの経費もかかりますので、こうした相場の案件が日々回っています。
作曲、編曲、演奏した音楽を販売する場合
印税収入
CDなどのパッケージ音源の収入の計算方法は
「CD1枚あたりの税抜き価格」×「6%」×「工場出荷枚数」×「出庫率」
となります。
また、レーベルやプロダクションとの契約のスキームが変わってくることもあります。
以下の計算式は一つの具体的な例です。
(消費税抜小売価格−容器代)×18%÷総収録楽曲数×本件原盤の楽曲数×計算対象数量
(「容器代」は消費税抜小売価格の10%、「計算対象数量」は出荷数量の80%)
この計算で出た金額を、音楽出版社との契約で取り分が決まります。作詞家や作曲家が別でいる場合は、さらに取り分が複雑になります。
現在は、世界でインターネットを通じて音楽を聴くことが主流となってきているので、パッケージ音源による収益は全体的に下降気味だと推測しています。
ストリーミング配信の収入
ストリーミング収益の還元率は、1再生当たりApple Musicが約1.06円、Amazon Prime Music Unlimitedが約1.04円、AWAが約0.9円、Spotifyが約0.27円、Youtubeが0.06円と、プラットフォームの種類によって、誤差があります。
というのも、各ストリーミングサービスのロイヤリティは、プラットフォームの利用者数によって上下すると言われているからです。
例えば、1再生回数あたりの単価が低いSpotifyは、ユーザー人口が2億人近く、世界の中でも大手です。
一方の、1再生当たり約1.06円Apple Musicは、3000万人ほどの会員数となっています。
しかし、例えばどちらかのストリーミングサービスで100万再生を狙うとなると、Spotifyの方がユーザーの分母が多いため、達成しやすくなります。
Youtubeでは10億人のユーザーがいます。これはどのプラットフォームよりも多いユーザー数ですが、1再生あたり0.06円となっています。
こうしたように、アーティストによってプラットフォームの相性もあるので、一概な報酬金額は断定できません。
講師や先生などレッスン活動
音楽教室などで先生をやっているミュージシャンは、生徒の月謝の6割〜7割ほどがミュージシャンに還元されます。
ミュージシャンにとって、音楽教室でレッスンをするメリットは、生徒の募集をミュージシャン自らがやらなくても集まりやすい環境であることです。
その代わり、もらえるレッスン代は少なくなります。
一方で家やスタジオなど個人レッスンを行っているミュージシャンは月謝の100%が自分の収入となりますが、生徒を募集するために集客をしています。
こうしたことから、レッスンでのミュージシャンの報酬は、月謝によって大きく変わるのと、音楽教室などで教えているか個人レッスンでやっているかで変わってきます。
その他活動および副業
最近は、プロのミュージシャンでも副業をする方も増えています。
例えば、日本が世界に誇るバンド「toe」は、フジロックなどの日本最大級の音楽フェスに出演していながらも、全員がバンドを本業としていません。
ベースの山根さんは、クロックスのアジアアパレルマネージャーを経て、アパレルブランド「OPEN YOUR EYES」の代表取締役として活動しています。
ギターの山嵜はデザイン事務所「Metronome Inc」立ち上げ、店舗設計デザイナーとして活動しています。
最近では、Youtubeやライブ配信などで活動するミュージシャンも増えてきていますし、動画編集やプログラミングなど、クリエイティブな仕事をしながら音楽活動をする人も増えてきています。
こうした流れから、多くのミュージシャンが今まで以上に収入源が細かく分かれていくようになるだろうと分析できます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ミュージシャンの収入源がかなり複雑に感じた方もいるかもしれません。
今回は、ジャズのミュージシャンを中心に収益構造をみていきました。
当サイトでは、ジャズに関する情報を発信していますので、よかったら他の記事もチェックしてみてください。
それではまたお会いしましょう!
Jazz2.0編集部の濱田でした。