世界のJazzの歴史・名曲・名演等を語る上で欠かせないのは、もはやどんな音楽にも欠かせない存在であるベース奏者(以下、ベーシスト)です。バンドの屋台骨を支える低音でリズムやハーモニーを支える彼らは、音楽で人を魅了する上でなくてはならない存在なのです
一口にベース、と言っても古くは中世ヨーロッパのクラシックで用いられたコントラバスという大きなバイオリンのような楽器からベースは成り立ち、今日ではお馴染みギターのような形のエレクトリック・ベース※1やコントラバス※2(Jazzではウッドベースとも)、ピアノのように鍵盤で演奏されるシンセ・ベース※3など様々に派生した低音で人々を魅了しています。
さて今回はそんなベースと言う楽器をJazzのなかでエレクトリック・ベース(以下、ベース)をスターダムにのし上げた立役者の一人、マーカス・ミラーをクローズアップします。彼の演奏がなぜ聴衆を魅了しJazzの一時代を築き上げたのか、その魅力に迫ってみましょう。
プロフィール
生い立ち
マーカス・ミラーは1959年6月14日生まれのニューヨーク出身ベーシストで、13歳でベースを手にし齢15にして様々なアーティストのサポートなどの仕事を開始していました。
後に彼のトレードマークとなるスラップ奏法もこの時には習得しており、バンドをやった事のある楽器経験者(特にベース)の皆々様なら良く分かると思うのですが13歳で楽器を初め15歳でプレイヤーになる、という上達スピードは才能センス云々の補正があったとしてもとんでもないマジ天才なんです。
ちなみに少年時代よりサックスやバスクラリネットを演奏しブラスバンドに所属していたそうなのですが、ベースに持ち替えたのはセッションなどでずっと弾き続けられるから、なのだそうです。
(サックスなどの管楽器は主にメロディやアドリブソロ等がメインなので出番のオンオフが比較的多い)
幼少より多彩な音楽に触れて育った事で豊かな感性と天才的なセンスが培われていったのでしょう。
キャリア
1979年(当時20歳)にプロとして独立し、Brecker Brothers、渡辺香津美らとのセッションやMiles Davis、David Sanborn(後述)といった錚々たる著名なジャズミュージシャンへのアルバム参加、様々なプロデュースなど80年代でどんどん力を付けていきます。
また数多くの来日歴もあり、自身初のライブハウスツアーが老舗ライブハウスBlue Note系列でのツアーです。
またジャズフェスである東京JAZZやBillboard東京などにも幾度となく出演。2010年の東京JAZZではOmar Hakim, Mike Mainieriらと共に再び渡辺香津美氏との共演もしており、東京JAZZ2011ではNHK BSプレミアムで放送されています。
またベーシストとしての垣根を越え、映画用の楽曲制作なども手がけており、メアリー・ランバート監督の「シエスタ」や、クリス・ロック監督の「ヒップホップ・プレジデント」など他多数の映画に音楽監督として参加しています。
2001年には自身のリーダー・アルバム「M²」が第44回グラミー賞「最優秀コンテンポラリー・ジャズ・アルバム賞」を受賞。
このようなたくさんの輝かしいキャリアを積み重ねながらも常に奢らず、世代や常識に囚われず常にクリエイティヴさを追い求めて活動しており、ベーシスト三人のユニット「SMV」や、Jazz、R&B、Hiphop、また先祖の住うアフリカの民族音楽など様々な音楽を貪欲に取り込んでいきました。
「それがJazzの生きる道だ」と本人が語るように、Jazzの持つ不定形な即興性、それこそがJazzそのものの本質であるとしてJazzを愛し続けているのではないかと筆者は考えています。
ざっと抜粋しましたがこのようなキャリアもありマーカスの名声は世界に広まっていったんですね!
マーカス・ミラーの魅力
サウンド・奏法
彼の魅力として最もよく取り上げられるのが、キラッ、バチッとした高音域にドスの効いたシャープな低音域の目立つスラップサウンドです。
このマーカスのスラップ奏法、本当にカッコいいんです。
なぜマーカスの音が唯一無二のカッコよさを放つのか、その基本原理はやはりベーシストの僕の見解としてマーカスの楽器を鳴らし切る優れた演奏力にあると言えるでしょう。
従来のベースのサウンドよりも高音と低音が際立ったこの音色、Jazz含むポピュラー音楽では「ドンシャリ」サウンドなどと表現されることが多くJazzのほかではより現代的なRock、Metalなどでよく耳にします。
しかしこの音色の難しいところが音作りで、単体ではカッコよく聞こえてもバンドサウンドに合わさると、肝心の音色のコシに関わる中音域が相対的に少ないため埋もれてしまうことが多いのが現状です。
マーカスはその難しい音作りを巧みな右手の使い方で楽器を鳴らし切りますが、その秘密が彼の右手のコントロール。
ベースに限らず弦楽器は皆そうなのですが張ってある弦のどこを弾くかでそこから発せられる音色は如実に変化します。少しややこしいのですが更にその場所をどのような力加減、指の角度で弾くかでも音は変わります。
一般的に、ベースという楽器は指でしっかり楽器を鳴らすと構造上太い中音域が目立ってくるので、元々がドンシャリサウンドでもしっかりとした音像を響かせることが可能になるんです。
アンプに繋いで音をデカくしてるのに更に鳴らすの?と思う方もいるかもしれませんが、エレキベース又はエレキギターは電子楽器ではありながら一般的な認識よりも遥かにアコースティック、つまり人間の物理的な力が作用する要素が大きいのです。
もちろん左手のニュアンスももちろんそこに関わってくるので両手のトータルの使い方でそのプレイヤーの音色は構成されますが、マーカスの奏でる音色はまさしく唯一無二。
これは断言しますが、全く同じセッティングのマーカス本人のベースを渡されてもマーカスと同じ音は出ません。
マーカスは演奏する曲の音楽性、そしてその最適解を瞬時に見定めそれに合う音色をその右手のニュアンスを持って表現し分けるのです。
彼はあらゆる音楽的な意味合いで天才なのは間違いないのですが、それほどに弦をつま弾く右手のニュアンス、コントロールが凄まじく優秀だということなんです!
マーカスのその両手から繰り出されるクリアでかつ地を這うような低音域は、むしろエレキベースよりシンセベースのそれに近く、その特異性が一聴しただけで分かる彼のアイコン的サウンドを作り上げているのでしょう。
少々楽器奏者サイドからの見解を述べてしまいましたが、後述する名曲たちの音源を聴いて、その素晴らしさを体感してみてください!
使用機材
マーカスのトレードマークとして有名なのはFender社の1977年製Jazz Bassです。
Fender
77年当時新品で購入したというこの楽器は彼にとって3本目のベースだったそうで、先代の2本も同じ型であったが盗難の被害にあったそう。楽器だけにかかわらず盗難はあってはならない事です。
マーカスはこの楽器の中身を楽器製作者であるRoger Sadowsky氏に改造を依頼し、現在お馴染みの高音と低域が大きくブーストされたサウンドになっていったのです。このマーカスの楽器以来本当にこの方向性の楽器は人気が上昇し市民権を得た気がしますね。
軽音部に所属するそこの貴方も、この楽器を携えスラップすれば一躍ヒーローです!
また、フレットという金属パーツを抜き音を滑らかにしたフレットレスベース、という楽器も使用しており、もっぱら使用されるのはFodora社のEmperorというモデルです。
Jazz界の超レジェンドベーシスト、Jaco Pastoriusもフレットレスベースの名手で、マーカスもそこからの潮流を強く感じます。
このFoderaという楽器メーカー、主にJazz, Fusionなどで多く用いられるのですが非常に音色バランスや作りがよく環境トップクラスの人気を誇っていますが価格がとても高い!
一般的にエレキベースは30万円を超えると良いお値段、という認識が多いと思うんですが、このメーカーは平均でなんと100万円はします!(笑)
「ベース界のフェラーリ」なんて二つ名は伊達じゃぁないです…”生涯の一本”クラスの逸品なので本当に良い楽器をご検討の方は是非!筆者のメイン楽器はFodera製の6弦ベースなんですが買ってから2,3日ちゃんと眠れませんでした(笑)
Sire
長年Fender社と契約しその楽器を使ってきたマーカスですが、近年Sire社という韓国の楽器メーカーと共同で開発したモデルが発売されています。
「楽器を始めたての若い人にも手にし易いように」、と安価な価格帯に設定されていながら、その価格を疑うようなハイクオリティーなサウンドを実現しています!
このSire、メーカー側からマーカス本人に営業をかけ開発に漕ぎ着けたのですが、そのあまりのクオリティーの高さにマーカス自身もFender社との契約を打ち切りSire社との契約に乗り換えるほどのナイスサウンドを実現しているんですね!
筆者も何本か演奏したことがあるんですがこの価格帯でこの音!?と大変驚かされました!発売当初は本来のターゲット層より他のプロベーシストから注目されたといいますから、その作りの良さには頷きます。
ちなみに調べた結果お値段はFender社の方は30万円前後、Sire社は7万円前後とSire社はかなりの安価を実現しています!
価格の開きこそあれど、どちらもマーカスのこだわりが十二分に詰まった逸品どうかお試しあれ!
名曲たち
Run For Cover
数あるRun For Coverの名演の中で私が一番好きなのはこの東京JAZZ2011のDMS(with George Duke, David Sanborn)での演奏!共演するフロントの二人が豪華なのはもちろんそうですが、バックを支えるキーボードのFederico Gonzalez PenaとドラムのLouis Catoとのコンビネーションも見事!デュークの揺らめくように低音域からゆっくりと上昇するアドリブ、サンボーンの激流のように溢れ出す激エモフレーズの数々!「泣きのサンボーン」の異名を肌で感じられる名演です。
Blast!
同じく東京JAZZ 2011のDMSでの演奏。
エスニックなリフのループとドロップチューンしたベースのヘヴィさが際立つ中毒性の高い曲ですね。
まるでエレキギターのような音で場を盛り上げるデュークと、長年蜜月の付き合いのサンボーンとの阿吽の呼吸が見事!
Power
リフやベースライン、メロディラインを一人でこのサウンドでいっぺんにやってしまうのはもはやマーカスのお家芸というべきか、もはや「マーカス・ミラー」というジャンルが作れてしまうんじゃないかと思えるぐらいオリジナリティに溢れた演奏をしています。
このリフ、結構難しいです。
またこういったエキゾチックな曲はキーボードのフェデリコの得意分野なのでしょうか、サイドメンっぷりが光りまくってますね、カッコいい!
Detroit
この曲もまたとてもカッコいいベースリフで始まりますが、先ほど紹介した他の曲に比べてエレキギターがとても映えるアンサンブルの構成になっていますね。
この曲は当サイトJazz 2.0代表である濱田とも何度かライブで演奏したのですがサビのメロディーをベースで弾き、またベースラインも一緒に弾くのでその意味では前述した「Power」よりも難易度が高いです!
私の手は小さく不利なのですが精進あるのみですね…!
Tutu
かのマイルス・デイヴィスにプロデュースした曲として有名なこの曲ですが、このライブでのアレンジは見事です。
冒頭では原曲のようにスローなファンクビートで始まりますが、一瞬の静寂の後マーカスの指示で3拍子のビートが始まります。
今回、バーカッションや様々な民族楽器を取り入れた編成故非常にエスニックでエキゾチックな風情溢れるアンサンブルが展開され、踊り出したくなるようなグルーヴが会場を包みます。
本来4拍子であるこの曲のメロディーがこの3拍子に乗っかっていく様は、マーカスのアレンジ、プロデュース力が見事という他ないでしょう!
12:00頃から4つ打ちでビートが再開し、楽器が徐々に重なり会場を揺らしてく様は、さながら天然のトランスビート、ジェンベと言われるアフリカのパーカッションも加わり本来音楽の発祥の地であるアフリカの原初の姿を思わせます。
Jazzとは強い即興性を持ち生き物のように変化する、それは演奏・ジャンルのみならずそれに携わる者のマインドそのものでもあるというマーカス並びにJazzの先人またマーカスの先祖達の想いを感じ取れる名演です。
Free
こちらライブ盤が探しても無かった為音源盤を紹介します。
ゲストにシンガーのCorinne Bailey Raeを迎えしっとりとしたR&Bナンバー。
ここでのマーカスは歌の合間を縫うような歌心溢れるリードプレイを聴かせてくれます。
マーカスの両手のコントロールが見事で、まるでベースが歌っているかのような、とろけるような表現はまさしく彼にしか出来ないプレイだと思います。
また、これは本人ではないのですがこの歌とベースを両方やられている凄い方の動画もあったので紹介します。
詳細な情報は判明しなかったのですが、こんなに自由に歌い上げながら骨太なスラップ…!
ベースボーカルって一般的にギターボーカルよりも難しいとされてるんですが、この動画では更にマーカスのリードフレーズも歌いながら難なくこなす…世界は広いです。
主な共演
David Sanborn
マーカスのキャリアは演奏者、作編曲家、プロデューサーなど多岐に渡りますが、その中でも特に有名な物としてまずは盟友David Sanbornとの出会いでしょう。
David Sanbornは主にJazz, Fusionなどで活躍する著名なサックス奏者で、伝統的なJazzに根付きながらもファンキーに昇華させた歌心のあるプレイが特徴です。
主に80年代から彼らの交流は始まり、サンボーンのアルバム「Straight to the Heart」(1984)、「Upfront」(1992)での共演などでもマーカスの演奏は活躍を見せています。
サンボーンのアルバムではベースはのみならず楽曲そのものやホーン・セクションのアレンジ、キーボードやギター、バスクラリネットなども演奏しプロデュース面でもその才能をいかん無く発揮しています。
有名な曲だと、Snakes、Run For Coverあたりなどが有名でしょう。
2015年に発表されたアルバムTime And The Riverでは15年振りの共演!と話題になったりもしましたね。
タイトルが漢字の「川」と表現されるジャケットが印象的なこのアルバムは、前述した2曲のようなファンキーな方向性ではないのですが、マーカスの美しいフレットレスベースが聴ける”Ordinary People”(2曲目)などが個人的におすすめです!
とにかくシンプルに曲が良いのとマーカスのフレットレスベースが美しいのです…80年代頃から何かと付き合いの深いマーカスとサンボーン、流れ移ろう川のように嫋やかでドラマティックな二人の織りなす円熟したプレイは必聴です!
Miles Davis
80年代に健康状態の悪化からのカムバックを果たしたJazz界のレジェンド中のレジェンドトランペッター、Miles Davisとの共演です。
Miles Davisの詳細に関してはこちらを参照して欲しいので割愛しますが、マーカスはマイルスの復帰作The Man With The Horn(1981)に参加します。
1981年その当時はというと未だそこまで知名度のなかったマーカスが脚光を浴びる要因の一つにもなった作品で、ギターにMike Stern、サックスにBill Evens(ピアニストとは別人)、ドラムにAl Fosterなど当時の新人ミュージシャンを率いファンクやフュージョンなどの今までとは違ったジャンルを研究した意欲作でありました。
このアルバムには全6曲中1,2,4,6曲目に参加しており、一曲目の”Fat Time”からスラップによるマーカス節を堪能できます。
マーカスの素晴らしさにその華麗なスラップ奏法があるのはもはや言わずもがなですが、エレキベースのごく一般的な奏法である2フィンガー奏法との織り交ぜ方も天才なんですよね…
4曲目の”Aida”などでもその素晴らしいフィンガーピッキングが堪能できますが、その背景にあるのはベース奏者なら誰もが影響されたと言っても過言ではない
Jaco Pastorius(1951-1981)の存在でしょう。
ジャコはJazz、ひいてはFusion界において革新的なムーブメントを巻き起こしたパイオニアで、エレキベースのフレットと呼ばれる音程をキープする為の金属の部品を取っ払いブリっとした中音域が強く前に出たリズミックでハーモニーへ強く干渉する演奏スタイルが特徴で、コードアプローチかくいうマーカスもジャコの影響を多分に受けておりそのスラップ奏法を確立するまでは延々と何年間もジャコの独特な指弾きを研究し続けていたそうです。
かたや6曲目の”Ursula”ではそれ以前よりJazzでウッドベースで用いられていた伝統的なウォーキング・ベースを披露しています。一般的なスウィングビートにはあのボン、ボン、ボンといった減衰の早いウッドベースの音色が欠かせないのですが、エレキベースの構造上減衰がそれよりも長く伸びのっぺりとしてしまいがちなんですね。
しかしマーカスのスイングはエレキベースでありながら従来のスイング感は損なわずそれでいてエレキベースのしなやかさも加わり見事なハーモニーです。
このアルバムは総じてマーカスのJazz的巧さが堪能できるアルバムでお勧めです!
スラップも指もなんでも行けるとか強すぎる…!!
MISIA
ここ日本のJ-POPシーンでもお馴染み、界隈屈指の最強クラスの女性シンガーMISIAとも共演しています。
共演したのはMISIAの39枚目のシングル「オルフェンズの涙」で、これは「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」のエンディングテーマにも起用され紅白歌合戦でも披露されるなど大変話題にもなった曲であります。
この共演はそんなナンバーのビッグバンドジャズアレンジアルバム「MISIA SOUL JAZZ BEST 2020」のセルフカバーから披露されました。
筆者は最初何も知らずに聴いていたのですが、まずベースが入りから他の曲とは違う雰囲気を醸しているのと、ベースのミックスがデカくてびっくりしましたね…!
全編に渡ってマーカス節が炸裂しまくっているのですが、ハイポジションで暴れ回る時下の音域でシンセベースがしっかりカバーしているのもお馴染みでしたね。
マーカスがこのアルバムで共演しているのはこの曲だけですが、素直に圧倒的楽曲が良いのとMISIA含むミュージシャンの方々の演奏が原曲よりも楽しめるアレンジになっている曲ばかりなので、とてもおすすめです!
SMV
最後に紹介するのは、ベーシスト、ベーシスト好きならおそらく多くの方がご存知であろう、”SMV”です。
Stanley Clarke, Marcus Miller, Victor Wootenの三人の凄腕レジェンドベーシスト三人による超弩級のバンドです。
バンド名の”SMV”の由来は、参加しているベーシストの頭文字を取って
“S”tanley Clarke
“M”arcus Miller
“V”ictor Wooten
“SMV”となっています。
それぞれ主にJazz, Fusion界で活躍する超凄腕ベーシストでそれぞれ説明していると際限が無いので今回生憎割愛しますが、三人共それぞれベクトルの異なった物凄いかっこよさを放っていますね…!
ベースが三人もいて低音だらけでボワンボワンにならないのか!?と思われるでしょうがここが彼らの凄い所、音作りや弾き方のコントロール、フレーズの選び方が見事で時にはギターのような使い方も見受けられるなど、先ほど前の段落で説明した楽器を鳴らす等の点も含めて棲み分けが三者三様とても素晴らしいのです。
言うなればオーケストラ的とも捉えられるような、それぞれのパズルのピースが噛み合うようなそんな美しさも感じ取れます。
また時々マーカスが仕切るような仕草も見受けられますね、こういったところでも彼のカリスマ力が発揮されています。
読者の皆様の中にベーシストの方がいらっしゃいましたら、是非有志のベーシストをもう2名集めてSMVコピーバンドをやられてみてはいかがでしょう、むしろ筆者もまだやった事がないので是非一緒にやりましょう!笑
おすすめアルバム
数あるマーカスのアルバムの中で筆者がおすすめしたいのは、こちら2012年にリリースされたリーダーアルバム「Renaissance」(ルネッサンス)です。
収録曲には先ほど紹介した「Detroit」(1)をはじめ「Mr. Clean」(9)等のファンキーなナンバー、「Setembro」(5)で美しく紡がれるフレットレスベース、バラード「Goree」(10)ではウッドベースもプレイ。
「I’ll Be There」(13)はthe Jackson 5のカバーで、日本盤限定のボーナストラックで「Rebop」はJazzのレジェンドベーシストPaul Chambersに捧げる楽曲となっておりどちらもエレキベースのみで演奏されており、その甘美でJazzへの愛が溢れた演奏は必聴です。
このアルバムの楽曲群は上記の通り非常にバリエーションに富んでおり、マーカスの深い音楽性、音楽への愛、挑戦が窺い知れる逸品であり、批評家からも高い評価を得ている一枚になっております。
是非皆さんも一度お手に取って聴いてみていただきたい、そんなおすすめアルバムです!
まとめ
いかがだったでしょうか。
マーカス・ミラーは現在61歳にして輝かしいキャリアにも決して奢らず、常に挑戦を惜しまない姿勢を貫いてきました。そんな音楽への向き合い方が魅力的な演奏、楽曲、ひいては唯一無二のサウンドに結びついているのでしょう。
まだまだ紹介出来ていない素晴らしい楽曲、名演がたくさんあるので、もし興味があればこれを機に聴き込んではいかかでしょう!
それでは!
Jazz2.0編集部の若月でした。