チェット・ベイカーってどんな人?おすすめアルバムや人気映画など現役ジャズトランペット奏者が解説

チェットベイカー

「チェット・ベイカーってどんな人?」
「チェット・ベイカーってなんで人気?」

トランペットだけでなく、シンガーとしても活躍し、音楽雑誌の人気投票で首位を獲得したチェット・ベイカー1929-1988)。
特に、1950年代半ばのアメリカのジャズシーンでは絶大なる人気があり、ウエストコーストジャズの代表的なアーティストとして度々紹介されます。

というわけでこんにちは。
Jazz2.0編集部の濱田です。

濱田
トランペット奏者である私ですが、誰もが一度はチェット・ベイカーみたいな音色を出してみたいと思うほど憧れる存在です。

映画『ブルーに生まれついて』、『マイ・フーリッシュ・ハート』などでも話題になったチェット・ベイカーについて紹介していきます。

それでは参りましょう!

生い立ち

チェット・ベイカー(本名:チェズニー・ヘンリー・ベイカー・ジュニア)は、1929年12月23日にアメリカのオクラホマ州イェールで生まれました。

プロのギタリストである父親とピアノストであった母親をもち、幼いころから音楽に親しみます。
中学生の頃に、トロンボーンを父親に買ってもらいますが、体が小さかったためトランペットに変更。
すると16歳の頃には米軍の楽隊に入隊しトランペットを演奏するようになります。

キャリア

軍隊にいたチェット・ベイカーは除隊すると、スタン・ゲッツチャーリー・パーカーと共演し腕を磨いていきます。
そして、チェット・ベイカーはバリトン・サックス奏者のジェリー・マリガンのバンドに加入しブレイク。
一気に知名度があがり、大きな注目を集めます。

1954年に『Chet Baker Sings』を発表。
このアルバムに収録されている「My Funny Valentine」はチェット・ベイカーの代表曲の一つで、このアルバムによってチェット・ベイカーは一世を風靡します。

同時期、音楽雑誌の人気投票でトランペット部門の首位を獲得。
マイルス・デイヴィスやクリフォード・ブラウン、ディジー・ガレスピーといった当時のスーパースターを抑え、ナンバーワンの座を手に入れました

薬物との戦い

チェット・ベイカーは、生涯薬物と戦っていました。

マリファナの売人としてのキャリアもあり、1950年代末にはマリファナの不法所持により逮捕されています。
また、1960年代にはヘロイン等の薬物をはじめ、ドラッグによるトラブルを頻繁に起こすようになり、演奏先の複数国でも逮捕されています。

1970年には、薬物による喧嘩沙汰によって歯を折られ、生活保護を受給しガソリンスタンドで働きます。
その後、ディジー・ガレスピーの助けもあり、復活を果たします。

しかし、オランダ滞在中にホテルから原因不明の転落死にてその生涯に幕を閉じました。

おすすめアルバム

Chet Baker Sings

2001年、グラミー殿堂賞を受賞したアルバム『Chet Baker Sings』は、チェット・ベイカーのブレイクを決定付ける作品です。
このアルバムに収録されている「My Funny Valentine」はチェット・ベイカーの代表曲の一つで、「My Funny Valentine」の有名なカバー作品としても広く知られています。

Side one:

  1. “But Not for Me” – 3:04
  2. “Time After Time” – 2:46
  3. “My Funny Valentine” – 2:21
  4. “I Fall in Love Too Easily” – 3:21

Side two:

  1. “There Will Never Be Another You” – 3:00
  2. “I Get Along Without You Very Well (Except Sometimes)” – 2:59
  3. “The Thrill is Gone” – 2:51
  4. “Look for the Silver Lining” – 2:39
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Chet Baker & Crew

チェット・ベイカーの作品で最も人気なアルバムの一つであるのが、『Chet Baker & Crew』です。
ウェスト・コースト・ジャズの立役者としても有名なチェット・ベイカーですが、この作品はよりビバップ的で東海岸的な要素が混ざり、より多様な文脈を味わうことができるアルバムです。

  1. “To Mickey’s Memory” (Harvey Leonard) – 5:12
  2. “Slightly Above Moderate” (Bob Zieff) – 6:59
  3. “Halema” (Phil Urso) – 3:51
  4. “Revelation” (Gerry Mulligan) – 3:58
  5. “Something For Liza” (Al Cohn) – 4:05
  6. “Lucius Lu” (Urso) – 5:34
  7. “Worryin’ the Life Out of Me” (Miff MoleBob RussellFrank Signorelli) – 2:59
  8. “Medium Rock” (Zieff) – 5:30
  9. “To Mickey’s Memory” [Alternate Take] (Leonard) – 5:25 Bonus track on CD reissue
  10. “Jumpin’ Off a Clef” (Al Haig) – 4:55 Bonus track on CD reissue
  11. “Chippyin’” (Leonard) – 3:20 Bonus track on CD reissue
  12. “Pawnee Junction” (Bill Loughborough) – 4:01 Bonus track on CD reissue
  13. “Music to Dance By” (Cohn) – 4:35 Bonus track on CD reissue
  14. “Line for Lyons” (Mulligan, Loughbrough) – 2:48 Bonus track on CD reissue

Chet

チェット・ベイカーはトランペット奏者だけではなく、シンガーとしても広く知られていますが、このアルバムはトランペットのみでレコーディングされた作品です。
世界的なジャズの巨人、ビル・エヴァンスが参加したアルバムとしても有名で、大きな注目を集めた作品です。

  1. “Alone Together” (Howard Dietz, Arthur Schwartz) – 6:46
  2. “How High the Moon” (Nancy Hamilton, Morgan Lewis) – 3:31
  3. “It Never Entered My Mind” (Lorenz Hart, Richard Rodgers) – 4:36
  4. “‘Tis Autumn” (Henry Nemo) – 5:12
  5. “If You Could See Me Now” (Tadd Dameron, Carl Sigman) – 5:11
  6. “September Song” (Maxwell Anderson, Kurt Weill) – 3:00
  7. “You’d Be So Nice to Come Home To” (Cole Porter) – 4:38
  8. “Time on My Hands (You in My Arms)” (Vincent Youmans, Harold Adamson, Mack Gordon) – 4:27
  9. “You and the Night and the Music” (Howard Dietz, Arthur Schwartz) – 3:50
  10. “Early Morning Mood” (Chet Baker) – 9:02 Bonus track on CD

映画

ブルーに生まれついて

俳優のイーサン・ホーク氏がチェット・ベイカー役として、その半生を描いた伝記映画。チェット・ベイカーの全盛期から薬物と戦う晩年の姿を描いた作品になっています。チェットの音楽人生に加え、恋人とのシーンも魅力的な映画です。イーサン・ホーク氏は本作出演のため半年におよぶトランペットの集中トレーニングを受け、劇中ではベイカーの代表曲「マイ・ファニー・バレンタイン」など歌声も披露しています。2015年には、第28回東京国際映画祭コンペティション部門にて上映されました。

マイ・フーリッシュ・ハート

「マイ・フーリッシュ・ハート」は、チェット・ベイカーの最後の数日間に焦点をあてたドラマとなっています。チェットは、88年5月13日午前3時、アムステルダムに滞在中のチェット・ベイカーが宿泊先のホテルの窓から落下して死亡しました。うつ伏せの状態で頭部から血を流している遺体を確認した刑事ルーカスは、チェットが落ちたと思われるホテルの窓辺に謎めいた人影を目撃します。しかし、ホテルの部屋には誰もおらず、殺風景なその部屋の机にはドラッグ用の注射器などが散乱し、床にはトランペットが転がっていました。捜査を開始したルーカスは、前夜に出演予定だったライブ会場に姿を見せなかったチェットの身に何が起こったのかを調べ始め、チェットの深い傷と向き合います。

Let’s Get Lost

https://www.youtube.com/watch?v=6PGeOZqvISk

1988年のチェット・ベイカーの生涯を描くドキュメンタリー映画です。国際的に有名な写真家であり映画製作者でもあるブルース・ウェーバーが脚本、監督を務め、エグゼクティヴ・プロデューサーにナン・ブッシュ、撮影はジェフ・プレイス、編集はアンジェロ・コラオが担当。作品は、デビュー当時から最近までのベイカーの写真をモンタージュしながら、レコーディング・セッションする彼の姿を捉え、またインタビューによって彼の私生活にまで立ち入り、アーティストとして、また人間としてのチェット・ベイカーの姿を浮き彫りにしようという作品になっています。

まとめ

いかがだったでしょうか。

チェット・ベイカーを掘り下げていくと、全米ナンバーワンの人気を誇り、数々の名盤を生み出した反面、繊細な心を持ち合わせ、薬物を手放せなくなってしまった姿がありました。

しかし、これを機に、チェット・ベイカーの作品に触れられたら幸いです。

チェット・ベイカーの作品は聴けば聴くほど深みを味わうことができるのが特徴で、個人的には非常に親しみやすいアーティストなのでジャズ入門にはおすすめです。

それではまたお会いしましょう!

Jazz2.0編集部の濱田でした。