ルイ・アームストロングの「What a Wonderful World」という曲は、誰もが一度は聞いたことがあると思います。
この曲はベトナム戦争を嘆いて作られた曲であるということはご存知でしたか?
曲の背景や、歌にこめられた思いを知ると、その楽曲をより深く味わうことができます。
jazz2.0編集部の番場です。
「What a Wonderful World」は、コブクロやMISIA、平井堅など、たくさんの日本人歌手もカヴァーしている曲です。
今回は、ルイ・アームストロングの楽曲「What a Wonderful World」の背景や歌に込められた思いなどを紹介していきたいと思います。
楽曲「What a Wonderful World」
基本情報
曲名:What a Wonderful World(邦題:この素晴らしき世界)
アーティスト:ルイ・アームストロング
作詞・作曲:G・ダグラス、ジョージ・デヴィッド・ワイス
リリース年:1967年
主なカヴァー:トニー・ベネット、イズラエル・カマカヴィヴォオレ、マイケル・ブーブレ、セリーヌ・ディオン、ジョン・レジェンド、東京スカパラダイスオーケストラ、BEGIN、平井堅、槇原敬之、MONGOL800、コブクロ、MISIA
「What a Wonderful World」は、アメリカのジャズ・ミュージシャン ルイ・アームストロングが1967年にリリースした楽曲です。
作詞・作曲を担当したG・ダグラスは、ベトナム戦争を嘆いてこの曲をつくったそうです。
功績
リリース当初はアメリカでの宣伝活動がうまくいかず、その売上枚数は1000枚を下回るほどでしたが、イギリスでは全英チャート1位を記録する大ヒット作となりました。
アメリカでも、1987年の映画『グッドモーニング, ベトナム』の挿入歌として起用された際に、全米32位を記録するリバイバルヒットを成し遂げています。
その他、オーストラリアチャート1位を記録、日本の映画『スウィング・ガールズ』への起用でリバイバル・ヒットなど、時代を超えて様々な国で大ヒットを記録しています。
ベトナム戦争
「What a Wonderful World」がリリースされた1960年代後半は、ベトナム戦争が最も激化していた時代でした。
アメリカ本土でも、戦争の実情がテレビや映画フィルムによって報道されるなか、ベトナム戦争の惨劇を嘆いたG・ダグラスによって「What a Wonderful World」は作詞・作曲されました。
黒人への人種差別の意識がまだ抜けていない中、黒人であるルイ・アームストロングが反戦歌を歌うというのは、命の危険すらある勇気のある行動でした。
「What a Wonderful World」のリリース当初、アメリカでの宣伝活動がうまくいかなかったのも、テレビ局などがオファーを拒否していたという事情があるようです。
日本での人気
日本でも、多くのテレビCM(ホンダ・シビックや東海東京証券、東京海上日動火災保険、ソニー、ソフトバンクモバイル)や、映画(『スウィングガールズ』)、テレビ番組(『湯のまち放浪記』)に起用されており、誰もが一度は聴いたことがあるほどの知名度を誇ります。
また、東京スカパラダイスオーケストラ、BEGIN、平井堅、槇原敬之、MONGOL800、コブクロ、MISIAなど、多くの日本人アーティストがこの曲をカヴァーしています。
楽曲にこめられた思いとは?
ルイ・アームストロングは、1970年に「What a Wonderful World」を再録音しています。
そのレコーディングには、イントロが付け加えられていて、ルイ・アームストロング本人による語りがいれられています。
Some of you young folks been saying to me.
(若いやつらが私にこう言ってくることがあるんだ。)“Hey Pops, what you mean ‘What a wonderful world’?
How about all them wars all over the place?
You call them wonderful?
And how about hunger and pollution?
That ain’t so wonderful either.”
(「ねえ、ポップス(ルイのあだ名)、’この素晴らしき世界’ってどういう意味だよ?
世界中で行われている戦争はどうなんだ?
君はそれでも素晴らしいって言うのか?
それに飢餓や汚染もあるだろ?
それらも全然素晴らしくないじゃないか」)
“Well how about listening to old Pops for a minute.
Seems to me, it aint the world that’s so bad
but what we’re doin’ to it.”
(「そうだなぁ、ちょっとだけポップス爺さんの言うことを聴いてくれないか。
私には、この世界はそんなに悪いものじゃないように思えるんだ。
ただ、私たちが世界にしていることが悪いんだ」)And all I’m saying is see what a wonderful world
It would be if only we’d give it a chance.
(私が言っているのは、この素晴らしき世界を見てみろということだけだ。
世界は素晴らしい。ただ私たちがチャンスを与えさえすればね。)
Love baby, love. That’s the secret, yeah.
(愛だよ、愛。それが秘訣さ。)If lots more of us loved each other
we’d solve lots more problems.
And then this world would be gasser.
(もっと多くの人たちが互いに愛しあえば、
もっと多くの問題を解決できる。
そうしたら、この世界はすごく面白いものになるだろうよ。)That’s wha’ ol’ Pops keeps saying.”
(ポップス爺さんはそういう風に言っているんだよ。)
このイントロは、70歳でなくなる直前に録音されたものです。
ルイ・アームストロングがこの楽曲に込めた思いが読み取れます。
“And then this world would be gasser.”
という部分が特に印象的だと感じます。
「If〜,would…」というのは仮定法といって現実とは違うことを「もし〜だったら」というように仮定する表現です。
戦争や飢餓や汚染があるという現実に対する悲しさを訴えているように聞こえます。
様々なアレンジ・カヴァー作品
セリーヌ・ディオン
アーティスト:セリーヌ・ディオン
収録アルバム:Miracle
収録年:2004年
レーベル:エピック
ジャンル:ポップ
スーザン・ボイル
アーティスト:スーザン・ボイル
収録アルバム:A Wonderful World
収録年:2016年
レーベル:Syco
ジャンル:ポペラ
イズラエル・カマカヴィヴォオレ
アーティスト:イズラエル・カマカヴィヴォオレ
収録アルバム:Ka ‘Ano’i
収録年:1990年
レーベル:Discos Tropical
ジャンル:ハワイアン、ポップ
コブクロ
アーティスト:コブクロ
収録アルバム:ALL COVERS BEST
収録年:2010年
レーベル:ワーナーミュージック・ジャパン
ジャンル:J-POP
東京スカパラダイスオーケストラ
アーティスト:東京スカパラダイスオーケストラ
収録アルバム:GRAND PRIX
収録年:1995年
レーベル:エピックレコードジャパン
ジャンル:スカ、J-POP
MONGOL800
アーティスト:MONGOL800
収録アルバム:etc.works2
収録年:2016年
レーベル:HIGH WAVE CO.,LTD.
ジャンル:ロック
まとめ
いかがだったでしょうか。
「What a Wonderful World」を歌っているルイ・アームストロングの紹介・解説記事もあるので、合わせてご覧いただけると、より理解が深まるかと思います。