「ジャズ・トロンボーン奏者ってどんな人がいるのかわからない」
わかります。
というのも、サックスやトランペットといった他の楽器に比べ、トロンボーン奏者は数が少ないからです。
というわけでこんにちは。
Jazz2.0編集部の番場です。
スライドの位置は感覚で覚えるため、ジャズの演奏で頻出する早いパッセージを演奏するにはその難易度が非常に高いことで知られています。
そんなトロンボーン奏者でも、ジャズ界の中で一世を風靡し、大きな影響を与えた巨匠がいます。
というわけで、これからジャズを聴いていく上で、これだけは知っておきたいトロンボーン奏者を紹介します。
それでは参りましょう!
グレン・ミラー
1904年3月1日アメリカ合衆国 アイオワ州クラリンダ生まれ。
グレン・ミラー・オーケストラのバンドリーダーとして、スウィング・ジャズ、ビッグバンド・ジャズを代表するアーティストに数えられる。
- 1939年「In the Mood」グラミー賞受賞
- 1939年「Moonlight Serenade」グラミー賞受賞
- 1941年「Chattanooga Choo Choo」グラミー賞受賞
上記のグラミー賞受賞曲に加えて、「Little Brown Jug」「American Patrol」, 「Tuxedo Junction」などの名曲を残している。
J.J.ジョンソン
1924年1月22日アメリカ合衆国 インディアナポリス生まれ。
J.J.ジョンソンは、その演奏を「空前絶後」と称される、モダン・ジャズ・トロンボーンの第一人者。
トロンボーン奏者カイ・ウィンディングと共に1954年に結成したバンド「J&K」は絶大な人気を博し、2人はスイングジャーナル誌の人気投票トロンボーン部門で常に上位に位置している。
他のアーティストの楽曲のアレンジや、多くの映画音楽のスコアを手がけるなど、アレンジャーとしても活躍している。
カーティス・フラー
1934年12月15日アメリカ合衆国ミシガン州デトロイト生まれ。
ジョン・コルトレーンのアルバム「ブルー・トレイン」への参加、アート・ファーマーやベニー・ゴルソンらのバンド「ジャズテット」や「アートブレイキー&ジャズメッセンジャーズ」のメンバーとして活躍し、その演奏が高く評価されている。
自身のリーダー作品も数多く残しており、アルバム「Blues-ette」に収録された「Five Spot After Dark」はソウル・ジャズの名曲として現在でも人気が高い。
グラチャン・モンカー3世
1937年6月3日アメリカ合衆国ニューヨーク生まれ。
父のグラチャン・モンカー2世はジャズベーシストで、甥のアル・クーパーはジャズサックス奏者である。
ビバップやハード・バップに対抗する新主流派ニュー・メインストリームのトロンボーン奏者として知られ、抽象的で前衛的なプレイスタイルで独自の音楽性を貫いている。
カール・フォンタナ
1928年7月18日アメリカ合衆国 ルイジアナ州 モンロー生まれ。
サックス奏者兼ヴァイオリン奏者の父を持ち、ウディ・ハーマン、ライオネル・ハンプトン、スタン・ケントンなどのバンドで演奏活動をしている。
彼は独自の演奏スタイルを確立し、とりわけ「ドゥードゥル・タンギング」という奏法は、これまでトロンボーンには不可能とされていた速いパッセージの演奏を可能にした。
ボブ・ブルックマイヤー
1929年12月19日アメリカ合衆国ミズーリ州カンザス・シティー生まれ。
ジェリー・マリガン・カルテットのメンバーとして名声を得て以降、テレビやクラブ、レコーディングのスタジオミュージシャンとしても活躍した。
作曲家、編曲家としての評価も高く、レイ・チャールズを含む多くのアーティストの楽曲の編曲を担当し、生涯で計8回グラミー賞にノミネートされている。
- 1960年「Blues Suite’」グラミー賞ベストアレンジメント賞ノミネート
- 1965年「The Power Of Positive Swinging」グラミー賞ベスト・インストゥルメンタル・ジャズ・パフォーマンス賞ノミネート
- 1966年「ABC Blues」グラミー賞ベスト・オリジナル・ジャズ・コンポジション賞ノミネート
- 1980年「Skylark」グラミー賞ベスト・インストゥルメンタル・アレンジメント賞ノミネート
- 2001年「Impulsive!」グラミー賞ベスト・ラージ・ジャズ・アンサンブル・アルバム賞ノミネート
- 2004年「Get Well Soon」グラミー賞ラージ・ジャズ・アンサンブル・アルバム賞ノミネート
- 2006年「Spirit Music」グラミー賞ラージ・ジャズ・アンサンブル・アルバム賞ノミネート
- 2008年「St. Louis Blues」グラミー賞ベスト・インストゥルメンタル・アレンジメント賞ノミネート
- 2011年「Nasty Dance」グラミー賞ベスト・インストゥルメンタル・アレンジメント賞ノミネート
カイ・ウィンディング
1922年5月18日デンマーク オーフス生まれ。
アメリカ合衆国に移住して、ショーティ・アレン楽団、ベニー・グッドマン楽団、スタン・ケントン楽団のメンバーとして活躍した。
1949年には、マイルス・デイヴィスのアルバム「クールの誕生」のレコーディングに参加。
また、トロンボーン奏者J・J・ジョンソンとの共演はとても人気が高く、2人はスイングジャーナル誌の人気投票トロンボーン部門で常に上位に位置している。
ベニー・グリーン
1923年4月16日アメリカ合衆国イリノイ州シカゴ生まれ。
トロンボーン奏者J・J・ジョンソンが先鋭的な音楽スタイルで人気を獲得している中、スウィング・ジャズ、ソウル・ジャズ等の王道スタイルを貫いた数少ないトロンボーン奏者のひとり。
プレステージ・レーベルやブルーノート・レーベル等から、リーダーとしてもサイドマンとしても数多くのレコーディング作品を残している。
ビル・ワトラス
1939年6月8日アメリカ合衆国 コネチカット州 ミドルタウン生まれ。
「バップ志向」を自称するビル・ワトラスの軽快なサウンドは、多くのジャズファンに慕われており、1993年にリリースしたアルバム「A Time for Love」に収録されたタイトル曲「A Time for Love」は、ライトなジャズファンにもよく知られている。
トロンボーン奏者の父のもとに生まれ、ジャズピアニスト兼作曲家のハービー・ニコルズを師に持っており、彼の音楽的才能や演奏技術は他のトロンボーン奏者からも認められている。
バンドリーダーとして以外にも、スタジオミュージシャンとしても活躍しており、メイナード・ファーガソン、ウッディ・ハーマン、クインシー・ジョーンズ、ジョニー・リチャーズ、カイ・ウィンディングなどの著名なアーティストと共演している。
フレッド・ウェズリー
1943年7月4日アメリカ合衆国ジョージア州コロンバス生まれ。
1960、70年代はジェームズ・ブラウンのバンドに所属し、ファンク、R&Bといったジャンルで活躍していたが、1978年にカウント・ベイシー楽団のメンバーとしてジャズのフィールドにも活動の場を広げた。
その他にも、レイ・チャールズ、ライオネル・ハンプトン、ランディ・クロフォード、ヴァネッサ・ウィリアムス、The SOS Band 、Cameo、Socalled、ヴァン・モリソンなど、幅広いジャンルで多くのミュージシャンと共演や編曲の提供をしている。
スティーブ・トゥーレ
1948年9月12日アメリカ合衆国ネブラスカ州オマハ生まれ。
ジャズトロンボーン奏者としてだけでなく、作曲家、編曲家、音楽大学院での講師としても活躍している。
バンドリーダーとしてレコーディングしたアルバムは20枚を超え、サイドマンやスタジオミュージシャンとしてもレコーディングをしているため、世界で最も多作なトロンボーン奏者と言われている。
また、貝殻を楽器として用いた先駆者としても知られている。
フランク・ロソリーノ
1926年8月20日アメリカ合衆国ミシガン州デトロイト生まれ。
ウェスト・コーストを代表するトロンボーン奏者であり、その卓越した演奏技術から、ジャズをはじめ、ポップスや映画音楽など、幅広いジャンルのレコーディングに参加している。
ケニーバレル、ポールチェンバーズ、トミーフラナガン、ハンク・ジョーンズ、フランク・シナトラ、サラ・ヴォーン、トニー・ベネット、クインシー・ジョーンズ、……共演した著名なアーティストは枚挙にいとまがない。
スライド・ハンプトン
1932年4月21日アメリカ合衆国ペンシルベニア州ジャネット生まれ。
ライオネル・ハンプトン、メイナード・ファーガソン、アート・ブレイキー等のバンドのメンバーとして活躍していたトロンボーン奏者で、作曲家、編曲家としても活動している。
トロンボーン奏者としては数少ない左利きのアーティストで、通常とは逆向きにセットされたトロンボーンを使っている。
演奏家、アレンジャーとして、グラミー賞をはじめとする数々の賞を受賞する実力派。
- 1998年「Cotton Tail」グラミー賞ベスト・ジャズ・アレンジメント賞受賞
- 2005年グラミー賞ベスト・ラージ・ジャズ・アンサンブル賞受賞
- 2005年インディアナポリス・ジャズ財団殿堂入り
- 2005年NEAのジャズの最高賞であるNEAジャズ・マスター賞受賞
- 2006年「Stardust」グラミー賞ベスト・ジャズ・アレンジメント賞ノミネート
レイ・アンダーソン
1952年10月16日アメリカ合衆国イリノイ州シカゴ生まれ。
シカゴ交響楽団のトロンボーン奏者によって育てられた、ダウンビート誌の批評家投票「最高のトロンボーン奏者」に何度も選出されるほどの実力の持ち主。
1990年代には、たまにヴォーカルをとることがあったようで、その際に2つの音を同時に歌うという離れ技を披露している。
2003年以来、ストーニーブルック大学の講師を務めている。
マイケル・ディーズ
1982年8月25日アメリカ合衆国ジョージア州オーガスタ生まれ。
ジュリアード音楽院出身で、彼は学院にいる間に、フランクロゾリーノ賞、JJジョンソン賞、サミーネスティコジャズ作曲家賞、ASCAPヤングジャズ作曲家賞、フィッシュミドルトンジャズコンペティションなど、多くの賞を受賞した。
卒業後は、ディジー・ガレスピー・オールスター楽団、クリスチャン・マクブライド楽団、ロイ・ハーグローブ楽団など、数々のビッグバンドで演奏をしている。
マイケル・ディーズは演奏家としてだけでなくプロデューサーとしても活躍しており、自身のジャズレコードレーベルD Clef Recordsで社長兼プロデューサーを務めている。
アンディ・マーティン
ロサンゼルスの音楽シーンで活躍するトロンボーン奏者。
商業レコーディング、テレビ、映画のサウンドトラック、ライブ劇場の業界では最も有名なアーティストであり、プッシーキャット・ドールズ、コールドプレイ、マイケル・ブーブレなど著名なアーティストのレコーディングに参加している。
インストラクターとしても活躍しており、数々の大学でゲスト演奏やクリニックを開き、多くの若いミュージシャンに影響を与えた。
ジグス・ウィグハム
1943年8月20日アメリカ合衆国オハイオ州クリーブランド生まれ。
17歳でグレン・ミラー/レイ・マッキンリー楽団のメンバーに抜擢される。
楽団脱退後は、ニューヨークでの商業演奏に不満を抱き、活動の拠点をドイツへと移した。
ドイツでは、トロンボーンの演奏はもちろん、音楽学校の講師や、音楽ディレクター、指揮者として幅広く活動している。
向井滋春
1949年1月21日愛知県名古屋市生まれ。
同志社大学のサードハード楽団、モダン・ジャズバンドでトロンボーンを演奏しており、1975年に新宿ジャズ賞を受賞し、その一年後にプロデビューを果たした。
1979年にニューヨークでフュージョン・ジャズに触発され、日本でフュージョンバンドを結成する。
1980年代には渡辺香津美キリンバンドや松岡直也ウィッシングに参加。
1980年代後半にはエルビン・ジョーンズが日本で結成したバンド「ジャパニーズ・ジャズ・マシーン」に参加し、約3年間に渡って日本中を回り演奏活動をした。
現在、洗足学園音楽大学音楽学部ジャズ科の講師兼客員教授を務めている。
まとめ
いかがだったでしょうか。
数々のジャズ・トロンボーン奏者を紹介しましたが、もしこの記事をきっかけにジャズ・トロンボーン奏者に興味を持っていただけたら嬉しいです。
それでは!
Jazz2.0編集部の番場でした。